概要
アポロ計画で人が月に行っていない理由の一つにヴァン・アレン帯という地球を取り巻く放射線帯を通過すると被ばくして生命の危険があるため人間は月に行けないという都市伝説がある。
このヴァン・アレン帯説が、都市伝説の中では一番本当らしく素人には分かりにくいものだ。
そこで、ヴァン・アレン帯説の実際について少しだけ補足する。
現状
ヴァン・アレン帯には、アルファ線(陽子)とベータ線(電子)の粒子が飛び交っている。
地球の赤道回りを中心にドーナツ状に取り巻いており、地球の直径を同じ位の幅がある。
放射線であるが基本的にアルファ線とベータ線は鉛や鉄の金属で遮蔽できるが、金属と反応してさらにガンマ線(高エネルギーの電磁波)や中性子線が発生するので宇宙船の外壁だけで完全に遮蔽するのはむずかしい。
したがって、アポロ宇宙船の月に行った飛行士は確かに被ばくしているのだ。
では、都市伝説通り飛行士は月に行けないのか?
事実
要するに、被ばく程度の問題である。
ヴァン・アレン帯を短時間で通過すれば被ばく量は少ないし、軌道によっても放射線の強度は異なる。
つまり、飛行士は被ばくすることは承知かつ被ばく限度内を想定して月に行ったのである。
実際に、被ばくした結果が身体にどの程度影響したのかは当然研究対象となっている。
どちらにせよ、人間がヴァン・アレン帯を通過するのは電子レンジの中を通過するのと同じようなものだという都市伝説はデタラメである。
電子レンジは水分子の振動と同期するマイクロ派を発生するもので、ガンマ線とは全く異なるものだ。
仮説
将来、宇宙船が地球を離れるとき必ずヴァン・アレン帯を通過しなければならないので、被ばくの対処は必須である。
ただし、アポロ計画の宇宙飛行士はその尊い実験台となったと言えるだろう。
2020年現在、人類がヴァン・アレン帯を通過したのはアポロの宇宙飛行士だけだ。今後人間が月や火星に向かう場合は、確かにヴァン・アレン帯の対応は重要な研究課題である。
しかし、何らかの対応は可能であり通過が不可能なものではないのだ。
素人の私が少しばかりヴァン・アレン帯や放射線について調べればこの程度のことはすぐにわかるのだ。
本記事を記載した目的は、都市伝説や疑似科学の書籍やサイトを見てすぐに信じるのではなく、裏をとるというのもネット時代では案外容易であることを伝えたかったのである。
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